・幸せ家族シリーズ。設定は此方。
・静雄×臨也。派生も左に同じ。
・ただの紹介文。
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「殺せええええ!!」
「死ねええええええええ!!」
「ぎゃああああああああああ!!」
ドギャアン
俺の名前は折原臨也。様々な人間が行き交う、ここ新宿で情報屋を営んでいる。
人間は良い、黙っていても俺に情報を運んでくれる、人為的なものから異形のものまで。だから人間は好き。人、ラブ!俺は人間が大好きだ!愛してる!
……と言えたらどんなに良かっただろう。昔の俺が懐かしい。
勿論、今でも人間は好きさ。ただ少し間違いがある……訂正しようか。
俺の名前は平和島臨也。新宿で情報屋を営んでいたのだが今は小規模運営中。人間も大好きだけれども、今ではもっと大事な家族がいる。
どうしてこうなったんだろう?俺は今でも疑問だ。
事の発端は一年前に遡る。
平和島静雄……シズちゃんとは多岐に渡って腐れ縁だと思っていたが、それも満更でもないと思うものだ。あんなに嫌って憎んでいても何かの拍子に好きになってしまうことだってあるんだ。好きと嫌いは紙一重だからね。
彼とお付き合いをして随分経った時……俺の妊娠が発覚した。
うん、そうだよ。俺は男だよ。
だからなんでこんなことになったのか、さっぱりわからない。新羅曰わく、静雄の可能性が未知数なのは君も良く知っているだろう、だそうだ。やはり長い間バケモノに犯されれば俺もバケモノ化するのだろうか?真相は闇の中だ。
本来大人しくて誠実な性格のシズちゃんだから懐妊はとても喜ばれた。その時に籍を入れることを決めた。所謂デキ婚というヤツだ。俺としては段階を踏んでからそういうことをしたかったのだが仕方がない。ただあれ以来オンナになった俺なのだが戸籍は男のまま。でも気にする必要もないよね!俺の得意技で誤魔化してしまいました。
そうして一人目を産んだのだが、どういうわけかこれが連鎖して……たった一年の間に六人も産まされたのだった。もう泣きたい。いくらシズちゃんが怪物だからってケダモノだからってこれはないよ!
しかし生まれた以上は放っておくわけにはいかない。子供たちの世話をするために情報屋は縮小運営した。波江にはお暇を出した。二度目になるリストラを経験させてしまったのはちょっと申し訳なかったかな?
子供たちは妊娠中同様、信じられないスピードで育っていった。シズちゃんの遺伝子にはかぐや姫並みの細胞分裂速度があるのだろうか……なんかありそうなんだけど。
しかしやはり個体差はあるようで俺の隣で落書きをさせている長男、津軽と、落書きを楽しんでいる次女――この世界では受ける方は皆オンナなのだ――、サイケでは随分年齢差があった。
俺の足元に短くなった赤いクレヨンが転がってきた。津軽の膝の上に座るサイケが手を伸ばして取ろうとするが到底届かない。しかし津軽は楽に取ってしまう。そしてサイケの手に握らせてやる。
「サイケ……しっかり……持つ……」
「はーい!」
青い羽織りを纏った津軽は兄妹の中でも物静かだ。無口で声も小さく、単語と単語の間が聞こえない時がある。サイケの面倒を始めとした弟妹の世話、家事を手伝ってくれる頼れる長男だ。
白いコートの袖が余りすぎているサイケは、まだまだやんちゃ盛り。明るい声の、幼稚園児くらいの子供だ。ピンク色のヘッドホンがお気に入り。兄妹の中で最も幼いので少々危なっかしい。
「……達磨?」
「ちがうよぉ、りんごだよお!」
津軽は二十歳くらいだがサイケはまだ五歳ほど。そんなだからサイケは、俺が育てたというよりは津軽に育てられたと言っていい。それくらい津軽は面倒見が良いのだ。
面倒見が良いと言うと三男の月島も負けず劣らずしっかり者だ。
「洗濯物、干し終わりましたよ」
「うん、ありがとう月島、もう戻っていいよ」
兄妹の中で生まれ付き頭の良かった月島は、今では日本一の大学に通うくらいの自慢の息子だ(勿論飛び級はさせた)。勉強の合間に家事やお使いをしてくれる。大人しくて控えめ、穏やかなので交友関係も良いと聞く。本の読み過ぎで視力が落ちてしまったため眼鏡をかけている。
しかしこれが問題なんだよなぁ。
「ねぇ月島、今日こそ俺と遊んで?何にする?二人だけのトランプ?二人だけの双六?それとも俺?」
長女の六臂は弟の月島が大好き。といっても月島より年下の十四歳だ。六臂が(赤いファーコートとか服装も含めて)一番俺に似ているけれど逆に言えば一番危険な子かもしれない。月島が大好きすぎて苦しくて死ぬ、とか、月島が出掛けると寂しいから電話を掛け続ける、とか、月島が自分以外を見つめると嫌だから眼鏡を隠すとか……まぁこれくらいなら可愛いものなんだけれど。
月島は厄介者(月島にとって六臂はどんな存在なのだろう?)に手を引かれながら勉強の為に部屋に戻っていった。あとでシズちゃんのプリンを持って行ってあげよう、たまにはご褒美をあげないとね。
そういえばシズちゃんは……。
「うわあああ!もうしません!もうしません!」
「手前がこんなことしなければ日々也は悲しむことなんてなかったんだ!分かってんのか、ああ!?」
「ごめんなさいごめんなさい!」
「心が籠もっておらぬぞ!駄馬め!土下座して謝らぬか!!」
先程の粛正はまだ終わっていなかったみたいだ。
声を荒げるシズちゃんに頭を下げているのはデリック。次男だ。この子は……ちょっとやんちゃ過ぎるところがある。悪い子ではないのだが完全な良い子でもない。
「母ちゃん、父ちゃんが俺を苛める!」
いい歳した子が何を言っているんだか。ちなみに母親扱いされるのには慣れました。それに俺が産んだんだしね。信じられないけど。
「今日は何をしたのさ」
「日々也のパンツをもぐもぐしまし……いたたたたたごめん、父ちゃん、ごめんってば」
「またやったの?全く、君も懲りないね……シズちゃん、そこまでにしてあげて」
「母ちゃんマジ女神!最高!」
……と、こんな感じのお年頃の息子である。女の子受けが良いためホストでバイトをしているのだ、それがこの性格に拍車をかけているのかもしれない。姉のサイケとは違うタイプのショッキングピンクのヘッドホンこそ私物だがその他の雑貨の殆どは店に来る女の子のプレゼントだと言うから目が離せない。
「ったく……臨也に免じて許してやるよ。二度とするんじゃねぇぞ、分かったな」
「はあい」
シズちゃんはデリックに対してはとても厳しい。理由は簡単だ。
「ごめんな日々也、デリック殺せなくて。手前の希望通りにしたかったんだが……許してやってくれ」
「はい、お父様」
三女、日々也を溺愛しているからだ。なんでも、俺から『大人しければ可愛い』要素を抽出したのが日々也だそうで……失礼しちゃうなぁ。
しかし日々也の先天的なオーラ(?)は認めざるを得ないものがある。高貴で気高い、薔薇の花の様な面を持ち合わせながら百合の純潔さも持っている。つまりお姫様気質なのだ。男親だからか、シズちゃんは日々也にデレデレだった。頭に乗せた金冠が如何に特別に愛されているかを物語っている。ここまで日々也に従順だと執事みたいだよね。まぁあくまで父親なんだけど。
シズちゃんはくたびれた様にソファーに腰を下ろす。日曜日の昼下がりの新宿を窓から見ていた。
三男三女も儲けちゃって一体これからどうするつもりなんだろう。何度も問い掛けたが決まってシズちゃんは、全員一人前にすれば良いだろ、という。本当に計画性が無い。一体誰の家に、誰のお金で暮らしてると思っているのだろう?ちょっと生意気だ。
シズちゃんのくせに。
バケモノで単細胞で筋肉バカで喧嘩人形でヒモで甲斐性無しで犬派でプリン好きなシズちゃんのくせに。
それでも惹かれてしまうのは腐れ縁だからだ。別に好きなんかじゃない。
むしろ大好きだ。
俺は沢山の子供たちも呑気な旦那様も大好きなのだ。
シズちゃんを見ていて、くすくす笑ってしまう。
「何だよ、臨也。いきなり笑い出しやがって。遂に頭がおかしくなったのか?それともこんな昼間っからヤりてぇのか?」
「死ね!」
前言撤回だ。
ああ、先が思いやられる。
短い!そして説明が長い!
粗方こういうノリでお送りします。絵の方も同様です。
2012.02.18
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